61. 児童精神科医の偏在と児童思春期支援指導加算

令和8年度診療報酬改定をめぐって話題となっていた、非精神保健指定医による通院・在宅精神療法の60/100減算をめぐって、5月29日に厚生労働省より訂正の通知がなされました。

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001705942.pdf

これによれば、

通院・在宅精神療法の児童思春期精神科専門管理加算又は児童思春期支援指導加算を届 け出ている保険医療機関(20歳未満の者又は20歳未満から継続して診療を行っている者 に算定する場合に限る。)

とされています。つまり、

  • 児童思春期精神科専門管理加算
  • 児童思春期支援指導加算

のいずれかの施設基準を届け出ていれば、減算を除外されることになったのです。

実は、私の働いている診療所は、20年以上にわたって北海道が創設した地域への支援プログラム(専門支援事業)に参加していたため、北海道厚生局への疑義紹介を通じて今回の減算から除外されることを確認していました。

それに加えて、「児童思春期支援指導加算」を届け出ていたことから、今回の通知によっても評価されたことになります。令和8年度からは上位の加算である「児童思春期支援指導加算1」の算定対象となります。

児童思春期支援指導加算の届け出が除外対象に含まれたことによって減算を免れた小児の施設は少なくないと推定され、厚生労働省が迅速に対応してくださったことで、一息つけた医療機関も多いでしょう(児童思春期精神科専門管理加算はそもそも常勤の指定医を要件としていることから、非指定医の救済効果は限定的と考えられます)。

しかし、今回の措置によって明らかになったもう一つの問題があります。それは今回の救済措置の目玉となる児童思春期支援指導加算の届け出に、地域によって大きな差があることです。

厚労省が公表している2025年7月の中医協資料によれば、全国の児童思春期支援指導加算届け出医療機関数は318です。しかしこの地域分布をみると、大きな地域格差があることがわかります。特に16県では届け出数が3件以下で、富山、山梨は0、福島、和歌山は1です。つまり、今回の訂正によって救済される医療機関は都会に集中しており、地方にはその恩恵が届きにくいのです。

この資料ではその理由についても示しており、

  • 適切な研修を修了した精神科の専任の常勤医師の配置が困難

が最多で、

  • 保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士又は公認心理師のう ち、2名かつ2職種以上(うち1名以上は適切な研修を修了していること。)の配置が困難

が次いでいます。地方における人材確保困難が背景にあることがうかがわれます。

厚労省では、その次の理由である

  • 患者が少なく、過去6か月間に初診を実施した20歳未満の患者数が月平均8人未満である

という項目を重視し、令和8年度の改定では、小児の初診数を4名に緩和した「児童思春期支援指導加算2」を新設しました。

これは対象施設拡大に向けて大きな前進ですが、その恩恵は主に都市部に限られ、地方では限定的な可能性があります。なぜなら、地方の問題は患者数が少ないことよりも、医師やコメディカルスタッフを確保することが困難なことだからです。

小児の発達診療において、特に児童精神科医が都会に偏在し、地方では専門的な診療を受けにくい状況は、私自身も喫緊の課題として認識してきました。今回の訂正は確かに大きな前進ですが、そこにもこの偏在が影を落とす構図になってしまっています。

厚生労働省の担当者の皆様と今回の訂正のために尽力してくださった多くの方々には本当に感謝しています。しかしその一方で、今回の訂正によって問題はすべて解決した、と手放しで喜ぶこともできません。

今後も発達診療をめぐる問題の根本から目を背けることなく、この問題について考え、声を上げ続けていきたいと思っています。

函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です