57. 感染者の個人情報はどの程度まで公開されるべきか

函館市で3か月ぶりに新型コロナウイルス感染症の罹患者が出た。年齢、性別、感染が疑われる場所など非公表の情報が多く、情報公開を求める声がSNS上でも目に付く。しかし、本当に今必要なのは、個人情報の公開なのだろうか?

私は、今一番大切なのは、冷静な態度を維持し、感染した人とその家族を(感染の経緯にかかわらず)地域の中で守る、という強い意志を私たち一人ひとりの市民が示すことだと思う。

なぜなら、感染者が特定され、本人や家族が「穢れ」のように扱われ、感染の経緯についての非難が相次げば、もし自分が感染したり濃厚接触者になったとき、それを隠そうとする方向への圧力に転じてしまうからだ。そうなれば感染経路を特定して感染拡大を防ぐことを困難にし、結果的に感染を広げる役割を果たしてしまう。

確かに感染者がいる場合にはその感染経路を明らかにし、濃厚接触者を同定し、感染拡大のために必要な措置を取ることは非常に重要だ。関係者の方々にはその点について最善の努力をしていただきたいと思う。

しかし、そのためにすべての市民が感染者についての個人情報を知る必要はないし、むしろたとえ感染したとしても個人情報の保護が保証されているということが、結果として多くの人たちの安心感につながり、感染経路の特定を容易にし、感染の早期の終息につながる。

そしてそれが結局は「この地域に暮らしてよかった」と感じられる、だれもが暮らしやすい地域への一里塚になるはずだ。

函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

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