55. 厚生労働省班研究:社会福祉法人侑愛会の入所施設における医療的ニーズに関する調査(第3報)~薬物療法の分析~

平成28年度(2年目)の厚生労働省班研究では、この前のブログで紹介した知的障がいの方の入所施設職員の意識調査に加えて、薬物療法の実態についての調査を行いました。対象は1年目の研究と同じ、社会福祉法人侑愛会の8か所の施設に入所している方444名です。

社会福祉法人侑愛会の入所施設における医療的ニーズに関する調査(第3報)~薬物療法の分析~

入所者の90%以上の方が何らかの薬物療法を受けており、多剤療法が一般的でした。一人当たりの薬剤の中央値は6種類、最も多い人では27種類になっていました。このまま何も手を打たなければ、高齢化と医療の高度化によって今後さらに複雑になっていく可能性もあり、薬物療法の単純化・簡略化に向けての戦略が必要です。

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<研究要旨>
8か所の障害者支援施設で生活している444名(男292名、女152名)を対象に薬物療法に関する調査を行った。403名(90.8%)が何らかの薬物療法を受けており、一人当たりの薬剤数の最頻値は4種類、中央値は6種類で、最も多い人では27種類の薬剤を使用していた。年齢が上がりADLが下がると使用薬剤数は増える傾向があり、医療的ケアを受けている場合には薬剤数が有意に多くなっていた。使用薬剤の種類では精神・神経科薬が最も多く、皮膚用薬、消化器用薬がそれに続いていた。精神・神経科薬の内訳は抗てんかん薬が最も多く、次いで抗精神病薬、パーキンソン病治療薬、睡眠薬となっていた。精神・神経科薬の使用率は57.9%であった。抗てんかん薬の使用率は36.3%で、そのうち単剤が37.9%、2剤以上が62.1%、抗精神病薬の使用率は31.8%で、うち単剤が62.4%、2剤以上が37.6%、睡眠薬の使用率は27.9%で、うち単剤が82.5%、2剤以上が17.5%だった。高齢化の進展とともに薬物療法のさらなる複雑化が予想され、薬物療法の単純化・簡略化のための仕組みを整えていくことが必要であると考えられた。
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函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

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