54. 厚生労働省班研究:社会福祉法人侑愛会の入所施設における医療的ニーズに関する調査(第2報)~職員アンケート調査から~

平成28年度(2年目)の厚生労働省班研究(市川班)では、1年目の調査の対象となった社会福祉法人侑愛会の8か所の入所施設で、施設職員278名を対象に医療的ニーズに関するアンケート調査を行いました。

社会福祉法人侑愛会の入所施設における医療的ニーズに関する調査(第2報)~職員アンケート調査から~

職員の意識としても「正確に実施できているか自信がない」など医療的ケアには困難を感じており、1年目の入所者側からの研究同様、職員の視点からも医療的ニーズが施設運営にとって深刻な課題となっていることが裏付けられたと言えます。

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<研究要旨>
社会福祉法人侑愛会の運営する8か所の障害者支援施設に勤務する職員278名を対象に、医療的ニーズに関するアンケート調査を行った。医療的ケアを含む医療的側面を持つケアには80%以上の職員が困難を感じると回答し、特に看護師以外の支援職員にその傾向が強かったが、看護師も2/3が困難を感じると回答していた。困難を感じる理由としては「正確に実施できているかどうか自信が持てない」が最も多く、経験年数が長い職員や管理職の方がむしろケアに対して困難を感じている傾向があった。入所者によるケアの拒否は2/3の職員が経験していた。医療機関の外来受診付き添いは職員の80%以上が、過去3年間の救急搬送付き添いと入院への付き添いはいずれも職員の約30%が経験し、困難を感じる点としては通常とは異なる業務に職員の手を取られることが最も多く、医療機関の利用に困難を感じないという回答は少数だった。すべての施設で種々の健診・検診を定期的に実施していたが、困難を感じる点としては本人の拒否を挙げる回答が最も多く、困難はないとする回答は約1/4だった。障害者支援施設において、医療的ニーズが施設運営にとって深刻な課題となっていることが職員の視点からも裏付けられた。
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平成28年度の研究報告書の全論文はこちらからダウンロードできます。
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do…

<総括研究報告書>

  • 市川宏伸:医療的管理下における介護及び日常的な世話が必要な行動障害を有する者の実態に関する研究 研究代表者

<分担研究報告書>

  • 市川宏伸:知的障害施設における福祉と医療の連携の現状と方向性 研究代表者
  • 高橋和俊:社会福祉法人侑愛会の入所施設における医療的ニーズに関する調査(第2報)~職員アンケート調査から~ 研究分担者
  • 高橋和俊:社会福祉法人侑愛会の入所施設における医療的ニーズに関する調査(第3報)~薬物療法の分析~
  • 市川宏伸:行動障害の状態にある知的・発達障害者に対しての支援に関する児童精神科医の関わりの実態に関する研究 研究代表者
  • 小倉加恵子:知的障害児者施設における医療の課題と方向性に関する研究
  • 曾田千重:療養介護病棟の役割の明確化と、地域移行に向けた福祉との連携
  • 市川宏伸:発達障害入院患者についてのアンケート調査(日本精神科病院協会)
  • 志賀利一:精神科病院から障害者支援施設に移行した強度行動障害者の支援 研究分担者
  • 井上雅彦:小児科外来における発達障害児へのプレパレーションの効果に関する検討
  • 志賀利一:地域で生活する知的障害者の健康診断の実施状況について 研究分担者
  • 市川宏伸:知的・発達障害者の人間ドック実践の実際と課題 研究代表者
  • 市川宏伸:知的・発達障害児者における、新たな人間ドック開始の試み 研究代表者
函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

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