48. 2017年の目標

あけましておめでとうございます。

2016年はこのブログをほとんど更新できませんでしたが、年頭ですので、一年の振り返りと今年の目標について書いてみたいと思います。

まずは昨年の振り返りです。昨年は、短期的な目標として、①職員の自立性を高める、②診療所の受診待期期間の短縮、の二つを挙げました。長期的な目標としては地域における医療資源の集約化を挙げ、2016年をそのための準備期間として位置付けました。

①の職員の自立性を高めることについては、まず現場職員の中から1名を管理職に昇格させ、管理業務の一部を担ってもらうようにしました。これについては、抜擢した職員の資質が高かったこともあり、結果として大成功でした。私自身の業務の軽減につながっただけでなく、施設運営への提案、チームコミュニケーションの改善、施設長(=私)の決断へのサポートなど、有形無形の大活躍をしてくれました。

もう一つの具体的な取り組みは、各部門のリーダーを集めてのリーダーミーティングを月1回開催したことです。私たちの施設の特徴として、各職員が個々に業務を行う傾向が強く、結果として個人の努力がバラバラの方向を向きやすく、施設全体の成長につながりにくいという問題がありました。これは、私たちが本来目指すべき自立とは異なるものです。リーダーミーティングでは、私たちの施設におけるリーダーシップとチームワークとは何なのか、ドラッカーの「マネジメント」の一節を引用したホームワークに基づいてラウンドテーブル方式で発表し、議論してもらうことを繰り返しました。1回30分間の短いミーティングでしたが、結果として私たちが地域の中で果たすべき役割(=ミッション)を各リーダーが理解し、そこから個々の場面における自分たちの役割を指示待ちにならず自立的に考えていくという流れを意識してもらえるようになったと思います。ただ、この形式の研修を計画したのが初めてということもあって内容が十分練られていたとはいえず、特に後半の効果が前半ほど明確でなかった点は反省材料です。

リーダー以外の職員については、育成面接の際の目標設定について、今までよりも一歩踏み込み、目標の立て方のところからより丁寧に行うことを心がけました。ただ、これについては十分であったとはいえず、もっと具体的な指導や助言が必要であったと思いますし、達成状況に対するフィードバックも、新しく管理職に昇格してくれた職員がかなりサポートしてくれたので助けられた面はありますが、十分であったとは言いにくいところがあります。

②の診療所の受診待機期間の問題の軽減については、二つの思い切った改革を行いました。一つは、受診待期期間が2年を超えていた就学以降の方の受付を停止し、もっと待機期間の短いほかの医療機関にお願いをしたことです。その代わり、私たちの強みは就学前の療育資源を持つところにあると考え、すべての予約枠を就学前に振り向けることにしました。さらに、詳細な評価や精密な医学的診断を行う従来までの外来を「発達診断外来」と呼ぶことにし、その他に、ニーズに基づいた療育を早期に受けることに特化した「子ども療育外来」を創設しました。この外来はフォーマルな発達評価や医学的診断を行わないこと、就学で完全に終了することの二つを特徴としているため、それだけ待機期間が短くなります。「子ども療育外来」は、療育は受けたいけれど診断は受けたくない、というニーズに応えることも目的にしています。現在、「発達診断外来」の予約待期期間は1年4~5か月、「子ども療育外来」は4~5か月となっています。

長期的な目標である医療資源の集約化については、2013~15年に厚生労働省の研究班(本田班)で行った調査研究を基に函館市への提言をまとめさせていただき、その中で行ったいくつかの提案の中に、この点についても盛り込むことができました。2016年には、このデータを基に、日本小児科学会、函館市小児科医会、道南発達障がいを考える会などで発表させていただき、また函館市教育委員会へも調査の結果を報告させていただいています。

これらの結果を踏まえ、2017年の目標を立てました。

短期的な目標の「職員の自立性を高める」は、今年も同様に継続します。今年は部門リーダーだけでなく、職員全員がリーダーシップとチームワークについて学び、自らの仕事の意味を地域における私たちの役割の全体像からとらえることができるようになることを目指します。また、個々の職員の強みや課題を本人とともに管理職が分析し、それを基に各人の目標設定やモニタリングを援助していく仕組みを導入したいと思っています。

もう一つの目標は、私自身が今後進む方向を定めることです。現在、私は診療所の唯一の常勤医師であると同時に施設長でもあり、診療だけでなく経営や人事、労務管理などの仕事も一手に行っています。今後、組織づくりを自分の仕事の中核としていくのであれば、施設長としてその仕事にしっかり注力すると同時に、管理職としてのスキルをもっと高めていかなければなりません。しかし、医師として、一支援者として、日進月歩の情報を集め、世界の潮流に取り残されないよう、学び、スキルを高めていく必要もあります。その両方を同時に行っていくことは、時間的にも労力の面からも次第に難しくなってきていることは確かです。私自身が何を自分の仕事にしたいのか、どのような業務が自分の強みを生かすことにつながるのか、それを実現するために何に焦点を合わせ何を切り捨てるのか、今年一年をかけてしっかり考えていきたいと思っています。

長期的な目標は、やはり地域における医療資源の集約化です。本田班の研究成果を基に、今年は医療保健行政の担当者の方にも働きかけていきたいと思っています。

そしてもう一つの長期的な目標は、日本ではまだ実現していない「知的障がい看護」という新たな分野について、日本におけるあり方を提案し、実現していくことです。これについては、昨年、社会福祉法人侑愛会がイギリスの知的障がい専門看護師Jim Blair氏を招聘し、福祉セミナーとして基調講演と実践報告、シンポジウムを開催したことがきっかけになっています。私は現在、もう一つの厚生労働省研究班(市川班)で、入所施設における知的障がいのある人たちの医療的ニーズについて調査を進めていますが、今年はイギリスにおける知的障がい看護の先進的な取り組みを参考にしながら研究成果をベースに提言をまとめ、私たちの施設での実践をどう展開させていくのか、長期的な戦略を提案していきたいと考えています。

函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

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