47. クリスマスの孤独

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14年前、私は単身ロンドンで勉強していた。正直、とても孤独だった。日本にいたときにはそれなりに話せるつもりでいた英語が、現地に行ってみるとろくろく通じない。相手の言っていることがよくわからないこともしばしばだった。私よりもずっと英語が堪能な留学生が(ごくごく微妙な)嘲笑の対象になっていたりすると、気持ちはますます萎縮した。特にロンドンの12月は最悪だ。午後3時ともなると、もう暗くなりはじめる。本当に気分が滅入った。

そんなさなか、当時まだ東京で働いていた妻が休暇を取って、年末を過ごしにロンドンに来てくれた。ヒースロー空港で妻の顔を見たときの安堵感は今でも忘れられない。

クリスマスは多くの人にとって、家族と過ごす日、幸せの象徴のような日だ。その一方で、この日が苦痛に満ちた日、自らの不幸を痛切に感じる日だという人たちもいる。あるカトリックの国では、クリスマスは一年で最も自殺の多い日だという。自殺の最大の原因は孤独なのだ。

世界中で、一人でも多くの人たちが暖かな気持ちで今日という日を過ごせるように。14年前の写真を眺めながら、そんなことを願わずにはいられない。

(Taken on 24th December, 2002, at Tooting, London)

函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

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