今週、北海道新聞朝刊の一面に、国立病院機構八雲病院の解体、移転の記事が掲載されました。早ければ平成17年にも筋ジストロフィー部門を札幌へ、重症心身障がい部門を函館へという内容です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150519-00010002-doshin-hok
八雲病院は、非侵襲的人工換気などの呼吸ケアの分野で日本をリードしてきました。今回の移転・解体に伴う最大の懸案は、今まで蓄積されてきた呼吸ケアチームという財産をどう守り、今以上に発展させていくかということだと思います。国立病院機構には、この点についてぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思っています。
もう一つの問題は、併設されている道立の特別支援学校(八雲養護学校)がどうなるかです。私も何度か見学させていただいたことがありますが、早くから先進的にIT化を進めるなどすぐれた取り組みを展開してきた学校です。八雲病院が廃止されると、筋ジストロフィーや重症心身障がいの子どもたちの比率は大きく下がり、地域の知的障がいや自閉症の子どもたちの比率が高くなることが予想されます。少子化の中でも、特別支援学校に入学を希望する子どもたちは年々増加し、特に高等養護学校については定員不足が深刻化しています。道立八雲養護学校も閉鎖されるのではないかという噂も聞きますが、ぜひ今まで培ってきたIT技術を生かした特別支援学校として存続し、地域の子どもたちにとって貴重な財産としてさらに発展していただきたいと思っています。
そして、八雲地域の医療に与える影響も十分に考慮する必要があります。現在、八雲地域には町立の八雲総合病院があり、地域の基幹病院となっています。国立八雲病院が廃止されることで、八雲総合病院が担う役割はさらに大きなものになるでしょう。運営主体の八雲町はもちろんのこと、この問題については北海道にも地域を守るという視点から積極的にかかわっていただきたいと思っています。
最後に、重症心身障がい部門への函館移転についてです。まず何より、入所者の方々へ専門的な医療的ケアや十分なリハビリテーションを提供していくこと、そして医療にとどまらない豊かな生活そのものを保障する支援体制が必要です。それと同時に、この地域で在宅生活を送られている方々に対しても、専門的なケアや支援を提供できる体制もぜひ整備していただきたいと希望しています。残念ながら、函館地域における重症心身障がいに対する専門的な医療や支援は大きく立ち遅れています。重度の障がいを抱えた在宅の方々はご家族の献身的な介護を頼りに生活していますが、レスパイトなど在宅生活を支える仕組みは著しく不足しており、ご家族の高齢化も大きな課題になっています。今回の移転は、この地域における重症心身障がいを持つ方々の生活をどう支えていくのか、もう一度考え体制整備を進める絶好の機会です。もちろん、これは国立病院機構に一方的にお願いすることではありません。これを一つの契機として、私たち地域の支援者も自分たちに何ができるのかを考え、この移転計画が、国立病院機構にとっても、利用者の方々や地域で暮らす障がいを持った方々とそのご家族にとっても、そして私たち地域の支援者にとっても、意義のあるものとなるように一緒に考えていければと願っています。