前回の記事で、私のミッション・ステートメントについてご紹介しました。今回は、それを受けて、私の今年の目標について書いてみたいと思います。
今年の私の重点目標は、ミッション・ステートメントで言えば、「I-B.職員のエンパワメントと支援技術の向上」、「I-E.地域のニーズの把握と関係機関との連携」です。
今までの私は、どちらかと言えば医師として知識を身につけることや技術を高めること、そして自分の外来を受診してくださる方への直接支援を充実させることに力点を置いてきました。それらは無論重要なものであり、これまで同様に継続していきます。
しかし、その積み重ねはむしろ困難な状況を作る原因ともなってきました。一つは、施設長でもあると同時に唯一の常勤医師でもあることから、自分の時間の多くを医師としての役割に振り向けざるをえず、職員一人ひとりに十分な時間を割くことができない、言い換えれば、職員の目標設定への援助と結果へのフィードバックが不十分な状況になっていました。今年は、職員の一人ひとりのためにしっかり時間を使い、職員が十分に力を伸ばし、発揮できることを重点的な目標として取り組んでいきたいと思います。
これは、私が職員にぴったりと張り付いて一挙手一投足に指示をする、という意味ではありません。そんなことをすれば、職員の方も迷惑なだけでしょう。むしろ、私が自ら行ってきたような業務も、職員に役割としてお願いをしていく方針です。しかし、それを行っていくためには、何を誰にお願いしていくのか、どのように進捗状況を確認し担当職員にフィードバックしていくのか、という綿密な計画が必要になります。そこに時間をかけようというわけです。
ただし、職員の一人一人に時間を使えば、医師としての仕事に割ける時間は少なくなります。特に私の外来は、週5日間ほとんど休みなく診療をしているにも関わらず、初診申し込みから受診までの期間が長大で、就学前でも1年弱、就学後の方に至っては2年弱と、常識とはかけ離れた待機期間になっているのです。これは反対に考えれば、私という一医師の努力によって縮められる待機期間には限界があるということです。
そこでもう一つの目標となるのが地域のニーズの把握と関係機関との連携です。前述のように、私たちの地域における発達診療の待機期間の長さは個人の努力によってではなく政策的に対応しなければ解決しない問題です。政策的に対応するということは、地域のニーズの客観的な評価を元に、行政を含む幅広い機関と意見交換をしながら、サービスを利用される方にとってもサービスの提供側にとってもwin-winとなり得る作戦を立て、実行していくということです。今年は、そのための基礎データを集める年にしていきたいと思っています。
これらの目標を実現していくためには、今までほかのことに使っていた時間を減らさなければなりません。減らす対象とするものは3つです。まず、講演と依頼原稿の執筆は、原則として今年はすべてお断りする方針です。次に、所内の書類を見直し、簡素化を徹底していきます。そして、私の外来の枠を削減し、管理職としての仕事をする時間を拡大します。
これらの対応によって、短期的に見ると私の外来の待機機関はさらに延長するかもしれません。しかし、長期的に見たときには、今までのような自転車操業で対応していくことに比べると、より地域のニーズに資する結果になると考えています。