11. 代替療法  ~正確な情報に基づいて付き合い方を考えよう~

代替療法とは、標準的な医療としては認められていない治療法を指します。最近はインターネットの普及により様々な情報を手軽に入手できるようになり、自閉症に対する代替療法の情報もあふれています。これらの治療を勧めるサイトを見ると、子どもに劇的な効果があったとする保護者からの投稿や、いかにも効果がありそうな理論が目白押しに並んでいます。権威のありそうな肩書を持った医師や科学者が推奨していることもあります。子どもの状態を少しでも良くしたい、と願う保護者にとって、心動かされる情報に違いありません。しかし、その一方で、本当に効果があるのか?高額な治療費を払う価値があるのか?だまされるのではないか?危険ではないのか?と不安にもなるでしょう。このような時代に、私たちは代替療法について、どのように考えるべきなのでしょうか。

代替療法に対する考え方が進んでいるのは、がんの治療です。がんの治療においては、代替医療を科学的に検証しつつ、治療を受ける人と医療者が代替医療との付き合い方を一緒に考え、最終的には治療を受ける人自身の自己決定を尊重するという方向になってきています。そのために大切なのは、何といっても正確な情報です。

自閉症については、そのものを治癒させえるという科学的根拠を持つ医学的治療は今のところありません。そのような中で、私たち医療者は、代替療法を含む医学的治療について、正確な情報を当事者や保護者の方々に分かりやすく伝える義務があると感じています。当事者、保護者の方も、代替療法を考える際には狭い情報だけに踊らされることなく、信頼できる医療者、支援者と相談し、幅広い正確な情報を手にした上で自己決定していくことをお勧めしたいと思います。

ただし、代替療法に対する考え方が進んでいるがん治療においても、代替療法「だけ」による治療は絶対に避けるべきとされています。がん以外でも、適切な標準的医療なしに代替療法のみを受け、死亡したり健康被害を受けたりという事件が後を絶ちません。自閉症に対しても、代替療法のみに頼ることなく、一人ひとりの特性に合わせた子育てや療育、教育、生活環境の工夫、そして何より自閉症を持つ人たちが暮らしやすい社会を作ることこそが最も大切であることを忘れてはなりません。

おしまコロニー機関紙「ゆうあい」2010年10月号より許可を得て転載)

函館で発達にかかわる診療をしている医師です。

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